2014年03月07日

「占領憲法の正体」新無効論−歴史を偽造する魑魅魍魎が跳梁跋扈する日本国憲法有効論の弊害1

 占領憲法有効論者は無効理由を隠蔽し法理を捻じ曲げるが、占領憲法無効論者は無効理由を列挙し、かつ凡ゆる有効論を粉砕することを常とする。南出喜久治弁護士の新無効論は従来の無効論に比べて更に凄みを増している。

国体護持の概説書「占領憲法の正体」(南出喜久治著/国書刊行会/2009年)の目次

第一章 国体論と主権論
動的平衡と雛型理論/宗教団体と宗教法人/国家における祭祀と統治/擬似祭祀と国教/祭祀と宗教/理性論と本能論/イエス殺しの思想/次世代の国民主権論/国民主権と立憲主義の相克/文化団体と規範団体

第二章 占領典憲の無効理由
典憲の意義/占領典範の無効理由/占領憲法の無効理由の概要
・無効理由その一 改正限界超越による無効
・無効理由その二 「陸戦の法規慣例に関する条約」違反
・無効理由その三 軍事占領下における典憲の改正の無効性
・無効理由その四 帝国憲法第七十五条違反
・無効理由その五 典憲改正義務の不存在
・無効理由その六 法的連続性の保障声明違反
・無効理由その七 根本規範堅持の宣明
・無効理由その八 憲法改正発議大権の侵害
・無効理由その九 詔勅違反
・無効理由その十 改正条項の不明瞭性
・無効理由その十一 憲法としての妥当性及び実効性の不存在
・無効理由その十二 政治的意思形成の瑕疵
・無効理由その十三 帝国議会審議手続の重大な瑕疵

第三章 新無効論 
・旧無効論と新無効論の相違
・新無効論の特徴その一
・新無効論の特徴その二
・新無効論の特徴その三
・新無効論の特徴その四
・新無効論の特徴その五
・新無効論の特徴その六
・新無効論の特徴その七
・新無効論の特徴その八

第四章 有効論
有効論の分類/後発的有効論/原状回復論/時効有効説/改正無限界説/革命有効説/国際法優位説/正当性説の登場/承詔必勤説

第五章 講和条約としての占領憲法
講和条約説/転換適格性/講和条約と評価しうる具体的理由/事実の慣習的集積/無効規範の転換

第六章 復元改正の道標
正統典憲の復元/講和条約群の破棄/国内系の復元方法/占領典憲の無効確認決議/その他の無効確認措置/復元措置の手順/憲法復元措置基本法と憲法臨時代用法/正統憲法調査会/地方自治小委員会/結語


 南出弁護士は13の無効理由を詳述している。特に「無効理由その八」は傑作である。思わず筆者は声を上げて笑ってしまった。日本国憲法の制定過程は帝国憲法の改正という形式を採ったにもかかわらず、日本国憲法の前文には次のように書かれている。

日本国憲法

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し(註、この部分はGHQ憲法草案の翻訳中に生じた誤訳で、正しい邦訳文は「正当に選ばれた国会の議員を代理として」である)、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。


 この前文の起草者はGHQ民政局のハッシー海軍中佐であり、彼は「日本の平和化民主化」占領作戦の記念碑として日本国憲法を永続させる為に、GHQが日本国憲法の実質的確定者であることを隠蔽し、日本国民がこれを制定したように見せかけたのである。

 しかしこの日本国憲法前文は、日本国民(本当はGHQ)が天皇に専属する憲法改正発議大権を侵害したこと即ち日本国憲法の制定(帝国憲法の改正)が帝国憲法の勅語、第七十三条、第七十五条に違反して行われたことを自白しているのである(占領憲法の正體71ページ)!

 しかも日本国憲法を確定した国民の代表機関はGHQの監視と統制の下にあった不自由なる帝国議会であり、日本国民が日本国憲法の施行後に初めて設置された国会の議員を代理として日本国憲法を確定できるはずがない。日本国憲法前文には嘲笑すべき誤認と矛盾が含まれているのである

 南出弁護士が詳細に分析しているように、あらゆる占領憲法有効論は、憲政史の真実を隠蔽し且つ立憲主義を否定する暴論、愚論、珍論の類いであり、確かに有効論の憲法学者の殆どが支離滅裂、曲学阿世、魑魅魍魎の極みである。
 しかも彼らは立憲主義を否定しながら、一方は護憲を叫び、他方は占領憲法第九十六条に基づく改憲を訴えるという矛盾を犯しているのである。

 立憲主義を否定する護憲論者が護憲を叫んでも説得力はなく、違憲の憲法改正が有効になるなら、改憲勢力は占領憲法第九十六条を無視すれば良いではないか。

 かかるご都合主義の二重基準と曲学阿世の魑魅魍魎が跳梁跋扈する原因は、「無理が通れば道理がひっこむ」の譬え通り、有効論の憲法学者が国際法違反にして帝国憲法違反の日本国憲法の制定(帝国憲法の改正)を無理やり有効というから、有効論の世界では立憲主義の法理と憲政史の真実が消滅しているのである。法理と真実の死滅、これが占領憲法有効論の害毒であり、高度成長時代の公害のごとく日本国に蔓延して小中高大学の教育現場を汚染しているのである。

 占領憲法第九十六条に基づく改憲が最高法規として有効となるには第九十六条を含む占領憲法が最高法規として有効でなければならない以上、占領憲法の改正内容が改憲論者にとって良好であればあるほど、改憲論者は違憲有効論の世界にのめり込み、曲学阿世の魑魅魍魎に変化(へんげ)してしまう。

 このことは、筆者自身が有効論に立つ改憲論者を相手にポツダム宣言を基準にして占領憲法の効力論争を行った際に、目の当たりにした。

 筆者の主張は、ポツダム宣言は明示的にも黙示的にも憲法改正の要求を含んでいなかったが、たとえポツダム宣言が日本国に帝国憲法の部分改正を要求していたとしても、占領憲法案の起草から占領憲法の施行まで、天皇および政府は無論のこと帝国議会および一般国民に至るまで日本側に自由はなかったから、占領憲法の制定過程は明白にポツダム宣言およびバーンズ回答に違反していたというものだったが、討論相手の自称反共的改憲論者は八月革命説への信仰を告白したばかりか、GHQの占領作戦は「日本の民主化」のために必要であったと言い張ったのである。

 筆者は大いに憤り、東久邇宮内閣が戦時統制を解除し言論の自由を復活させた後にGHQが開始した陰湿卑劣な検閲は日本国民から議会制民主主義の復活強化に必要不可欠な「言論の自由」と「知る権利」を剥奪したのだから、それはポツダム宣言第十項「日本国政府は、日本国国民の間に於けるデモクラシー的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は、確立せらるべし」違反ではないか!GHQ自身が日本政府の義務履行および権利確保を妨げる障碍になっていたではないか!!と難詰した。

 そうすると討論相手は何とポツダム宣言の対日要求から「言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重」の確立と「日本国国民の自由に表明せる意思」の存在を消したあげく、日本側がポツダム宣言に違反したからGHQが日本側に占領憲法を強要したのであり、GHQの検閲は日本国の民主化に必要だったと放言したのである。

 筆者は椅子から転げ落ちそうになるほど驚愕し、GHQの検閲はポツダム宣言第十項後段「言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は、確立せらるべし」違反ではないというのか!?日本国民から意思表明の自由と知る権利を剥奪したGHQの検閲そのものが「日本の民主化」に反するではないか!と再び詰め寄ったが、討論相手は、GHQの検閲がポツダム宣言第十項後段に違反するか、違反しないかという質問には明答せず、ただ民主化のための検閲はあり得ると繰り返すばかりであった。討論相手はフォースの韓国面に落ちていたのである

 「日本国憲法」成立後49年経過した1995年に衆議院小委員会の議事録がようやく公開され、1996年に議事録を検討し紀要論文をまとめてみる過程で、議員たちが主観的にも自由意思をもっていなかったこと、GHQや極東委員会にはまつたくさからえないと認識していたことを確認した。そして、今回、議事録を再検討してみて、その思いをさらに強くした。

 特に衆議院小委員会の議事録を見ると、国民主権の明記問題や皇室財産問題、文民問題および国務大臣任命をめぐる問題について、議員たちは、明確な形で、GHQや極東委員会の意向について政府側委員から説明されていた。そして、GHQ等の意向どおりに政府案に対する修正案を提出したり、逆に自分たちの立てた修正案を引つ込めたりしていた。

 三大政党などのほとんどの政党が希望した参議院議員職能代表制案も、政府側からGHQが反対していると明確に告げられたため、小委員会は条文化をあきらめている。戦力放棄にいたっては、三大政党は、共産党と同じく本当は反対でありながら、マツカーサーの声明があるため、自衛戦力を承認する第9条修正を最初からあきらめていた。

 要するに、議員たちは、客観的にも主観的にも、自由意思などをもつてはおらず、GHQの統制下にあったのである。

 この点は、1996年に公開された貴族院憲法改正小委員会筆記要旨によると、貴族院憲法改正小委員会の委員たちも共通に認識していた。たとえば、田所美治は、「我々の本意はこの憲法を初めから全部お断りしたい所であるが、それはとても出来ない」(『読売新聞』1996年1月22日)と述べている。

 そして戦後憲法学の第一人者であり続けた宮沢俊義も、同様の認識をもっていた。宮沢は、9月末からの貴族院憲法改正小委員会の審議に委員として参加し、GHQの要求により文民条項の挿入にしぶしぶ賛成している。
 宮沢の賛成理由は、「憲法全体が自発的に出来て居るものでない、指令されて居る事実はやがて一般に知れると思ふ。重大なことを失った後で此こで頑張った所でさう得る所はなく、多少とも自主性を以ってやったと云ふ自己欺瞞にすぎないから」(同)ということであった。

 ところが宮沢俊義は、彼自身がしりぞけたはずの自己欺瞞を行なっていく。前述のように、宮沢をはじめとした有力な憲法学者は、「八月革命」と議会の自由意思による修正、という二つの虚構をつくりあげ、この虚構にもとづき民定憲法論を展開し、「日本国憲法」を独立国の永久憲法として有効であると説いてきた。

 この自己欺瞞的考え方は、大学教育や高校までの教育を通じて、国民一般に広められていく。そして、「日本国憲法は、米国の圧力があったとしても、基本的に日本の国民や議会がつくりあげたもので、永久平和主義の理想を説いたきわめて素晴らしい憲法である」という神話が流布されていくのである(「日本国憲法」無効論)。


 占領憲法第九条の改正は無論のこと、占領憲法を帝国憲法に近づける占領憲法の大改正でさえも、決して有効論の害毒に汚染された日本国を洗浄することはできない。有効論に立脚する改憲は、とりあえず我が国の防衛体制を強化するかもしれないが、我が国が滅びるまで延々と有効論の害毒を垂れ流し続け、国家の基礎である教育を腐蝕するのである。

 しかし教育の腐蝕の始まりであった占領期に、教育勅語はGHQによって失効させられたものの、昭和天皇がGHQの圧迫と指令による昭和二十一年元旦の新日本建設の詔書(俗にいわゆる人間宣言)の冒頭に「五箇条の御誓文」を引用された結果、五箇条の御誓文は失効を免れ、これまで、どの国家機関からも一切排除されておらず、占領期から現在、そして将来に向けて、揺ぎ無い光芒を放ち続けているという南出弁護士の指摘は読者を感激させるに違いない。

 そして読者の思いは小さな湧き水となり、それらは合流して我が国を帝国憲法の顕現と教育の再生に向かわせる清らかな大河を生み出し、国内に蔓延する占領憲法有効論の害毒を浄化していくだろう。

 筆者は確信する。我が国のネット空間で我が国の現在と未来を憂う読者の皆様は、公正と真実を尊ぶが故に、韓国を嫌悪し、日教組を糾弾し、NHKに憤怒しているのだ。
 ならば違憲有効論の魔界(フォースの韓国面)に自ら身を落とし、曲学阿世の魑魅魍魎に憑依されるという愚劣な真似は絶対に犯してはいけないはずである。

 帝国憲法復元改正の具体的法策を詳述する占領憲法の正體−新無効論を読了した後、筆者は司法試験の勉強を再会したくなった。これは真実を教え、読者のリーガルマインドを飛躍的に高めてくれる憲法学の名著にして破魔の護憲書である
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posted by 森羅万象の歴史家 at 07:00| 憲法学の名著と迷著 | 更新情報をチェックする