2014年03月07日

法戦不能に陥る日本の悲劇 日本国憲法有効論の弊害2

 小山常実氏の主張「日本国憲法」無効論によれば、ポツダム宣言とバーンズ回答は、日本占領の場合に適用される特別法であり、特別法は一般法(ハーグ陸戦法規)に優先する原則があるという。しかし井上孚麿氏はこれを否定する。

国際法と憲法

 占領中の憲法改変禁断は、占領又は被占領の経験ある国々のみが、これをあるいは実行において示し、或いは実定法の成文において明示するに止まるのみではなく、一般の国際法においても、一九〇七年からはこれを禁断していることは、周知のはずである。

 一九〇七年にヘーグにおいて締結された陸戦法規は、軍事占領のことを明文をもって規定しているのであるが、その第四十三条においては、占領軍司令官に絶対の必要のない限りは、占領地の現行法を尊重すべき旨を規定しているのである。軍事占領は、講和条約がまだ締結されないうちに、すなわち戦争中に、行われるものであるから、このような場合に、占領軍司令官が力任せに勝手な振る舞いをして、占領地の法制を掻き乱すような野蛮な振る舞いをなくそうとする配慮に基づくものである。

 もっとも、絶対の必要がある場合には、占領地の現行法を変更することも、占領軍司令官には認められている。絶対の必要というのは、占領軍の存立を危うくさせるような原因を排除するというようなことであって、たとえば、占領軍に加えられる危害を除去するために、占領地の在来の刑法の規定に拘わらないで、刑罰を課するとか、占領軍の食糧を確保する必要上、やむを得ず、既存の法令に反する徴発を行うとか、占領軍の行軍の便宜のために、従来の道路交通法に反する行為が許されることを言っているのであろう(中略)。

 ある国際法学者は、又、ポツダム宣言や降伏条項と一般国際法との関係を、「特別法普通法の関係」とし、降伏条項等が国際法に優位するという。これも大間違いである。特別法と普通法の関係であるならば、特別法が普通法に優先するに決まっているけれども、ポツダム宣言にしろ、降伏条項にしろ、これらは客観的普遍的な国際法ではなく、特定の当事国家間の条約に過ぎないのである。

 この特定の条約が、普遍的な国際法に優先するというのでは、全くお話にならない。それでは国際法が泣く。ニ、三の国が国際法に背反する条約を結べば、それで国際法はそれだけ変改されるというのでは、国際法の客観的権威はなくなってしまうということになるではないか。

 この説は、正しく特定国家間の条約を、普遍的な国際法に優先すると見るのであるから、こうなっては国際法などというものは、何らの権威ももたなくなる。真実は正にその正反対であるべきである。既存の一般国際法に照らして、新規な特定の条約の有効無効、適法違法、正邪善悪等が判断されるのでなくてはならない。あくまでも国際法が主であり、条約は従であるべきである。

 この横田説は本末顛倒である。これでは、悪い者、強い者勝ちで、それによって国際法の権威は失墜してしまい、国際法は全く有名無実となる(現憲法無効論―憲法恢弘の法理 258〜261ページ)。


 一般国際法は、国際社会の構成者である国家を等しく拘束する国際法規であり、国際慣習法とこれを成文化した条約(多国間国際条約になる場合が多い)から構成される。一般国際法は普遍的国際法とも呼ばれる。これに対して特別国際法は一部の国家だけに適用される国際法規であり、一部の国家間の条約である。

 我が国が1945年8月14日に受諾し、同年年9月2日に正式調印したポツダム宣言は我が国と連合国(アメリカ、イギリス、中華民国、ソビエト)との間の休戦条約であるから特別国際法である。1907年ハーグ陸戦法規は一般国際法である。これを否定する者はいないであろう。

 しからばポツダム宣言とハーグ陸戦法規のどちらが優位にあったのか。横田(喜三郎?)説は本当に正しいのかどうか。これを判断するために役に立つ基準が1969年の条約法に関するウィーン条約であろう。この条約は、それまでになかった新規範を創造するものではなく、連合国国際法委員会が条約法に関する従来の一般国際法を法典化したものだからである。

 1969年の条約法に関するウィーン条約には次のような規定がある。

第53条【一般国際法の強行規範に抵触する条約】

 締結の時に一般国際法の強行規範に抵触する条約は無効である。この条約の適用上、一般国際法の強行規範とは、いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する同一の性質を有する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、認める規範をいう。


 1907年ハーグ陸戦法規第43条は一般国際法の強行規範(禁止規定)であるから、横田が言い出した学説はやはり間違いのようである。

 そもそも講和条約の発効前すなわち戦争中の休戦(休闘、戦闘の部分的停止もしくは全面的停止)は戦争行為の一種であって戦時国際法の適用対象である。現に1907年ハーグ陸戦法規は第五章に休戦に関するルールを置いている。

 もし条約が一般国際法に優越するというなら、戦争当事国の間では、優勢国は、講和を求めてきた劣勢国に対して「講和の条件として我が軍が占領軍として一定のあいだ貴国を占領し、占領地の法律を改変し、占領地の公的私的資産を略奪する権利を認めよ、さもなくば迅速かつ完全なる壊滅あるのみとす」という要求を突き付け、これを休戦条約として劣勢国に受諾させても構わないということになり、戦勝国および戦勝国の占領軍は圧倒的な武威を背景に戦時国際法の遵守義務から逃れることができるではないか。これは戦時国際法の戦死である。

 国際法は慣習法である。文明国家群の反復行為が国際法の形成に大きな影響を及ぼす。もし我が国が遅まきながらも1907年ハーグ陸戦法規第43条を根拠の一つとして日本国憲法の無効宣言と大日本帝国憲法の復原改正を行えば、それは今後日本と同じ憂き目に遭うかもしれない弱小国に、占領軍に破壊された自国の正統憲法を事後救済するための活模範を与え、ハーグ陸戦法規第43条の存在価値と実効力を高める。
 
 これは国土の一部あるいは全部を敵軍に占領される危険を孕む専守防衛(本土決戦)を国是としている我が国自身の法体系の防衛に貢献する。

 逆に我が国が原状回復を行わないまま日本国憲法を最高法規として有効としてしまうと、アメリカあるいは共産中国といった軍事大国が弱小国を軍事占領し、ハーグ陸戦法規に違反して被占領国の法体系を破壊しても、我が国が、その戦争犯罪を非難して国際法秩序の維持する強制力の一つである国際世論の圧迫に加わることは出来ない。それは有効論に対するギロチンブーメランだからであり、日本国憲法の正当性を崩壊させるからである。
 
 実際に日本国憲法有効論に固執する日本政府は占領軍の戦争犯罪を批判するつくる会の教科書に最悪の検定を行ったという。以下の文部省の行為は検定から逸脱しておりGHQの検閲と変わらない違憲行為である。

 これに対して、扶桑社の申請本は、いかがわしい「日本国憲法」成立過程に関する真実を書いたものだった。申請本は、GHQ案の提示を記した後、「政府は英語で書かれたこの憲法草案を翻訳・修正し、改正案として帝国議会に提出した。審議は4ヶ月におよんだが、修正点についてはすべて連合国軍の許可と承認が必要とされた」と記述していた。まさしく、帝国議会の審議は完全にGHQに統制されたものだったのだが、右の傍線部は検定過程で削除されてしまう。

 さらに申請本は、「戦争に勝った国が負けた国の法を変えさせることは、国際法によって禁止されている。加えて、日本国民が自分の意見を自由に表明できない占領中に、日本国憲法が制定されたという事実などが、憲法をめぐる論議のもととなっている」と記していた。そして側注では、占領軍が被占領地の現行法を尊重すべきであるという原則を説いたハーグ陸戦法規第43条を引いた上で、「ドイツも敗戦後、連合国の占領下におかれたが、占領中の憲法制定を拒否し、ボン基本法を成立させた」と記していた。だが、この本文も側注も全て削除されてしまうのである。

 削除部分はすべて史実である。にもかかわらず、なにゆえ削除されてしまうのか。これに対して、日本書籍新社や日本文教出版のような歴史偽造が、なにゆえ検定を通過するのか。
 本来無効な「日本国憲法」という占領憲法を、基本的には日本側が自主的に作った有効憲法に作りかえんとするために、国家ぐるみで歴史偽造しようとしているのである。この歴史偽造の精神から、明治憲法は天皇制絶対主義の憲法とされるし、戦前日本の戦争は侵略戦争との位置づけられてきた(公民教科書は何を教えてきたのか281ページ)。


 日本国憲法有効論に立脚しながら平然と「違憲行為」を犯す日本政府は韓国政府と同じ支離滅裂な無法者である

 さらに日本国憲法有効論が我が国にもたらす悲劇は、日本国憲法の改正手続きから生まれてくる改正日本国憲法案は、日本国憲法と同じく、帝国憲法第75条の相続規定やハーグ陸戦法規第43条の準拠規定を持ち得ないということである。それら国家変局時の憲法改変を禁止する規定は、ポツダム宣言を蹂躙したGHQの軍事占領下に制定された日本国憲法の正当性を覆滅してしまうからである

 親(日本国憲法)から生まれる子(改正日本国憲法)は親に似て国家の危機に対して虚弱体質の憲法になってしまう。

 伊藤博文は外国軍の占領されやすい回廊国であるベルギーの憲法を学び帝国憲法に第75条を置いた。そして伊藤の予見は不幸にも的中し、第二次世界大戦中に我が国は連合軍に占領され帝国憲法秩序を破壊されてしまった。

 ドイツ軍に占領されたベルギーは占領終了後に占領法規を破棄し旧憲法を復活させたが、戦後の我が国はベルギーが行った正統憲法の事後救済を学ばない。事後救済を行うための根拠は帝国憲法にも戦時国際法にもあるのに、我が国の政府はベルギーに追随せずに、GHQの検閲方針を墨守するのである

 ドイツ軍に占領されたフランスは1946年憲法に第九十四条「本土の全部もしくは一部が外国軍隊によって占領されている場合は、いかなる改正手続きも、着手され、または遂行されることはできない」を置いた。しかしフランスと同じ屈辱を味わい辛酸を舐めた我が国の日本国憲法は、ハーグ陸戦法規に準拠する規定を持っていない。

 日本国憲法に「検閲はこれをしてはならない」(第21条)を置きながら日本国民に対するポツダム宣言違反の検閲を続けた厚顔無恥なマッカーサーおよびGHQといえども、日本国憲法にハーグ陸戦法規に準拠する規定を置くことはできなかった

 スイス政府編民間防衛 新装版−あらゆる危険から身をまもる(273〜299ページ)は、レジスタンス(抵抗運動)と題して読者に戦時国際法を教えている。

国際法

占領された国の国民の保護と権利
抵抗運動における戦いの戦略と戦術
消極的抵抗
違法な占領政策に対してとるべき行動
積極的抵抗
裏切者に対する戦い
スパイ
敵を消耗させよ
怠業、破壊行為
占領軍に対する公然たる闘い
解放


 我が国の国防方針は専守防衛(本土決戦)である以上、日本政府はスイス政府を見習い、ポツダム宣言を蹂躙したGHQの対日占領作戦を教育材料として利用し、敵国の占領軍に対して戦時国際法に基づきレジスタンスを行う術を日本国民に教える日本政府版民間防衛を編纂公刊すべきなのに、日本政府はそれを全く行わない。これは1949年ジュネーブ条約違反であり日本国憲法第98条違反である。

 それどころか昭和20年8月15日以降も千島と南樺太において第五方面軍が自衛戦闘を行いソ連軍の北海道上陸を阻止したにもかかわらず、我が国は殆ど国を挙げて、8月15日を終戦記念日といい、昭和27年4月28日まで続いたGHQの占領政策が戦争状態における違法な軍事占領作戦であったことを隠蔽する有様である

 憲法と国防に限ると、戦後の日本は、外国の長所を学ばず、積極的に過去の失敗を繰り返そうとする。戦後日本の国是らしい「過去の誤ちを直視し、反省し、決してこれを繰り返さない」という誓いは、殆どニュースピークの類の様である。

 日本国憲法有効論の弊害は、我が国から法戦能力を喪失させてしまうことである日本国憲法有効論者とは、GHQの暴力に屈服し法戦を放棄したものだからだ。

 法戦とは、不幸にして我が国が戦争に突入した場合に、国際法を武器として日本国民が敵国の占領軍に抵抗し、かつ戦争終了後に我が国が国家変局時の憲法改変を禁止する国際法および憲法の規定を根拠に、占領軍に破壊された自国の正統憲法を復活させることである


 我が国が法戦能力を喪失したまま専守防衛(本土決戦)に臨むなど狂気の沙汰であり、国家の自殺でしかない
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posted by 森羅万象の歴史家 at 08:00| 日本国憲法の正体 | 更新情報をチェックする