2014年03月13日

議員と学者と教師の真贋を鑑定するための試験問題−大日本帝国憲法の参考憲法はどれか

問題 伊藤博文、井上毅、金子堅太郎、伊東巳代治が大日本帝国憲法の起草のために参考にした外国の憲法はどれか。次の中から該当するものを選びなさい

1、プロイセン憲法
2、ベルギー憲法
3、スウェーデン憲法
4、イギリス憲法
5、アメリカ憲法

 正解は?

正解は1、2、3、4、5、つまり全部

 帝国憲法制定会議(清水伸著/岩波書店/1940年)495〜688ページには、枢密院帝国憲法制定会議に提出された「憲法説明」および「参照」が収録されている。それらの帝国憲法に関する第一次史料について著者は次のように解説している。

 「憲法説明」及び「参照」は、何れも美濃判洋紙に騰写版刷り(毛筆)せるを、二つ折りして仮綴したもので、議場に参考書として配布されたものと称せられる。本書はこの両者を別々にして紹介する閲覧の不便を避け、ここに各條章毎に分類したものである。

 「憲法説明」は起草者が草案の解説を試みたるものにして、各條章に渡り、草案の意義、理論、学説をあるいは我古典、典例に拠り、あるいは海外の著述に鑑み、詳述を期している。

 議場はこれを参照にして先ず草案を理解し、然る後に質疑討論を重ねられたのであって、議場に無用の疑義、討論を省略せしめし功績も大なるものがあったのである。

 先に本書の序において、本文を読み以て本議場の論議を見られれば正鵠を得べしと称した所以である。但し「憲法説明」なる名称は著者の便宜上付けしものであって、原文献には何らの名称もつけられてはいなかった。されば会議では屡々(しばしば)「注解」などと呼ばれていた。

 「憲法説明」には上諭案、目次、説明の三あり、上諭案は議場の議には上らなかったが、のち修正を加えられて、憲法発布勅語の一部分とされた。

 既に伊藤博文著「憲法義解」は、憲法発布直後に公刊せられ(明治二十二年四月)、その序文の一節に「博文窃に僚属と倶に研磨考窮するの余釿を筆記と為し、稿を易え繕写し名づけて義解と謂う、頼て大典の注疏を為すにあらず、聊備考の一に充てむことを翼うのみ、」とあり、憲法起草と共に斯かる著述が企てられしものと見られて来た。

 今「憲法説明」とこれを比較考察するに、前者は後者を大綱化し、且つ修正を施したものに外ならざるを発見されると共に、憲法説明が夙に伊藤を中心とし、僚属−井上毅、伊東巳代治、金子堅太郎等の手により成ったものなることを認められる。

 「参照」は各條に就て、凡そ参考となるべき内外古今の文献を網羅している。起草者の該博なる研鑚の至れるのに何人も多大の敬意を表せられることと思う(帝国憲法制定会議493〜494ページ)。


 伊藤博文、井上毅、金子堅太郎、伊東巳代治が枢密院帝国憲法制定会議史料「参照」に列挙した諸外国の憲法は以下の通りである。伊藤らはそれらを参考にして帝国憲法を起草したのである。

プロイセン憲法
スウェーデン憲法
ベルギー憲法
フランス憲法(1814)
オーストリア憲法
イタリア憲法
オランダ憲法
デンマーク憲法
バイエルン憲法
ヒュルデンブルグ憲法
ザクソン憲法
スペイン憲法
イギリス憲法
フランス憲法(1815)
ポルトガル憲法
フランス憲法(1848)
ドイツ憲法
フランス憲法(1791)
ルクセンブルグ憲法
スイス憲法
フランス憲法(1875)
フランス憲法(1793)
フランス憲法(1795)
アメリカ憲法
フランス憲法(1830)
フランス憲法(1852)
バーデン憲法
ブラウンシュバイヒ憲法
オルデンブルヒ憲法
アルテンブルヒ憲法
ハノーフル憲法
サクソン・マイニンゲン憲法


 我が国の衆参両院議員には、枢密院帝国憲法制定会議史料を読む時間も、これを理解し活用する能力も無いだろうから、議員の代わりに我々有権者が帝国憲法制定会議(清水伸著/岩波書店/1940年)を読み、帝国憲法起草者の該博なる研鑚の成果を吸収するべきである。そうすると誰でも簡単に議員、学者、教師の真贋を見分けることができる。
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posted by 森羅万象の歴史家 at 07:00| 憲法学の名著と迷著 | 更新情報をチェックする