2016年08月08日

忘れてはいけない明治天皇へのグラント将軍の助言−井上毅の漸進主義

 アメリカ南北戦争で勇名を馳せて北軍総司令官となり、戦後には大統領(第18代)を二期務めたユリシーズ・シンプソン・グラント将軍は、1877年5月から世界漫遊の旅にのぼり、1879年(明治12年)6月、長崎に到着し、我が国の朝野から大歓迎を受けた。同年8月10日、明治天皇は浜離宮の中島の茶屋にグラント将軍を招き、議会・政治・外債・琉球問題・条約改正・教育問題等について将軍の忌憚のない意見を求められた。

 グラント将軍は、「陛下からこのようなお言葉をお聞きいたし大変うれしく思います。もとより最善の国策について論じる場合、その国の人々こそいちばん適任ではありますが、思いついた意見を陛下に喜んでお話しいたしたいと思います」と答え、政党と議会について次のように助言した。

 どの文明国にも一般に政党なるものがあります。政党の存在は、お互い悪政を行うのを阻止する上で、たいへん役立ちます。しかしもちろん現政府を転覆させようとする政党は有害であります。おそらく日本にも政党がいくつかありましょう。

 また我が国では扇動政治家(デマゴーグ)と呼んでいる指導者が、貴国にもいるかもしれません。随従者を得るために、政府に対して何らかの口実を見つけて異議を唱えねばなりません。まちがいなければ、この国の新聞や人民の一部が今盛んに主張していることは、民選議会の設立であるようです。

 議会設立の時機が来ているかどうかわかりませんが、議会はいずれどの国にとっても益するところが大きいのです。ロシアを含むヨーロッパの国々は皆、立法上の理由から民選議会をもっております。

 政治は君主政治もしくは共和政治にかかわらず、人民にもとづくものほど強いものはなく、権勢家はそれによって人民が望んでいるものや人民にとって最善なるものを知ることができます。早晩、この国にも議会を設立しなければなりませんから、人民に政府の意向を伝え、いずれ人民のための議会の開設があることを知らせておくべきです。人民が近く議会の開設されることを知ったら、彼らにも責任があることを教えておくべきです。

 しかし銘記しておかなければならぬ点は、ひとたびこの特権を与えてしまうと、取り戻すことができないことです。いったん選挙権と代議士選出権を与えますと、永久にこれ許予しなければなりません。ですから議会を設立するに際しては、用心に越したことはありません。あまりにも急に議会を設けることは、きわめて危険なことです。機が熟さないのに議会を設立すれば、社会的混乱を招くことは必定ですが、そればかりは御免でしょう。また議会に期待をかけすぎてもいけません。

 最も確かな方法は、ゆっくりと進むことです。先に進みながら人民を慎重に教育し、一歩一歩結果に到着すべきです。惟うに、まず第一になすべき点は、この国の指導者たちを起用して顧問会議をつくり、立法権ではなく討論権を与えたらよいでしょう。そうすれば議員は自信と知識がつき、自分たちが荷っている責任の性質が理解できるようになります。何よりも、民選議会を設立するさいの要諦は、民衆の教育に在ります。が、日本は教育の点ではすばらしい進歩を遂げました。


 明治天皇はこれをお聞きになり、大いに感服したという(グラント将軍日本訪問記224〜225ページ)。

 明治14年6月に井上毅が執筆した憲法意見書は、執拗に「漸進主義を維持しなければならない」「漸進之主義を失ってはならない」といい、「卑生の深く慮る所の者は、当局者あるいは理論に心酔しして深く各国異同を究めず永遠の結果を思わずして、徒に目の前の新奇を悦び内閣の組織を以て、衆議の左右する所に任せんと欲するあらば、一たび与うるの権利は流汗の再び回らすべからざるに同じ、独り国体を敗ることあるのみならず、その世の安寧、国民の公福を図るにおいて亦あるいは将に空理臆想の外に出て、悔ゆとも追うべからざるに至らんとす」といい、交詢社の私擬憲法案を批判している(井上毅伝史料篇第一230ページ)。

 これが岩倉具視の憲法意見となったのであるが、明治天皇に対するグラント将軍の助言が、1879年(明治12年)8月10日の両者の会談に陪席した三条太政大臣を通じて、岩倉具視や井上毅に伝わっていたのかもしれない。とにかくグラント将軍の意見が明治政府の方針に影響を与えたことは間違いなさそうである。
 
 南北戦争の北軍―青き精鋭たちを率いたグラント将軍の意見「ひとたびこの特権を与えてしまうと、取り戻すことができないことです」と、井上毅の意見「一たび与うるの権利は流汗の再び回らすべからざるに同じ、独り国体を敗ることあるのみならず、その世の安寧、国民の公福を図るにおいて亦あるいは将に空理臆想の外に出て、悔ゆとも追うべからざるに至らんとす」は、在日外国人への地方参政権の付与や地方主権という名の過激な地方分権の是非を検討する際に、我々有権者が絶対に忘れてはいけない言葉である。

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posted by 森羅万象の歴史家 at 02:00| 憲政史の真相 | 更新情報をチェックする