2015年01月23日

現在の日本国に本当に必要な改革は公選議院の弊害を抑制する上院の再生

 我が国の国会が日本国憲法無効・大日本帝國憲法現存(有効)の確認決議を行う場合、その直後に、天皇陛下が、貴族院が無く帝國議会の召集が現状不可能であることに鑑み、帝國憲法第八條および第五十五條に基づき内閣の輔弼と副署(同意のサイン)に依り、法律と同位規範である緊急勅令を発し、マッカーサー占領軍憲法から有害無益な部分と帝國憲法と明確に矛盾する部分を削除したものを、五年程度の有効期間を持つ憲法臨時代用法として用いるための「憲法復元措置基本法」を制定する。

 そして我が國は、可及的速やかに枢密院官制や貴族院令(いずれも勅令)の復元ないし新定を行い、貴族院、枢密院、大審院など欠損している機関の復元ないし代行機関の設置の検討等に入るのだが、おそらく貴族院の復元再生は容易であろう。

 なぜなら天皇は、帝國憲法第四條および第三十四條に基づき内閣の輔弼に依り、山中伸弥教授をはじめとして、皇族華族ではない國の功労者と学識者を貴族院議員に勅任できるからである。

 帝國議会の召集が現状不可能であっても、すでに大日本帝國憲法にある優れた非常事態対処規定の活用が帝國憲法の復元措置を可能にする。

枢密院帝國憲法制定会議憲法草案第三十四條 貴族院は皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織す其の資格選任特権及其の他の制規は勅令を以て之を定む

【枢密院に提出された草案第三十四條注解】

 貴族院は立法に参預する集議体の一部たり。而して其の議員の或は世襲たり、或は終身たり、或は任期あるに拘らず、均しく上流の議士たるに妨げることなし。貴族院にして其の職を得るときは、政権の平衡を保ち、憲法の鞏固を扶け、上下調和の機関となり、軽進躁動の防範となり、國福民慶の基址を永久に維持するの効果を収めんとす。

 蓋し貴族院は以て貴紳をして政治の謀議に参預せしむるのみにあらず、又以て國の老成を集めて、國民慎重、練熟、保守、耐久の気風を代表せしむ。其の構成制規は勅令に具わるを以て、憲法に之を列挙せざるなり。

【枢密院に提出された草案第三十四條参照】

瓦(ヒュルデンブルグ)第二十九條 上院は次に記する人員を以て組織す
第一 王族
第二 公候の戸主及帝國國会又は州会に於て公許の権ある領地を有する貴族の総代人
第三 國王の撰命する終身又は世襲議員

葡(ポルトガル)第三十九條 貴族院は國王の撰命したる終身官の議員と世伝の議員とを以て成る定員なし
同第四十條 儲君及王子は当然の貴族議員なり故に満二十五歳に至れば貴族院に列席することを得

孛(プロイセン)第六十五條至第六十八條(千八百五十八年削る、代るに下文一條を以てす)上院は國王より終身を以て任命したる議員及世襲の議員を以て構成す

【明治の自由民権運動を代表する交詢社系の憲法私案(カッコ内は交詢社)】

第十七條 左院は特撰議員と公撰議員とを以て組織するものとす(第十九條 元老議員は特撰議員と公撰議員とより成立するものとす)

第十八條 特撰議員は皇族華族及び名望学識ある者の中より皇帝之れを親撰し過失あるにあらざれば終身其職に居るものとす但其人員は左院議員の過半数に上るを得ず(第二十條 特撰元老議員は皇族華族及嘗て重要な官に在りし者学識ある者)

【帝國憲法の関連法令】

貴族院令(明治22年勅令第11号)

第一条 貴族院は左の議員を以て組織す
一 皇族
二 公侯爵
三 伯子男爵各々其の同爵中より選挙せられたる者
四 国家に勲労あり又は学識ある者より特に勅任せられたる者
五 帝国学士院の互選に由り勅任せられたる者
六 東京都北海道樺太各府県に於て土地或は工業商業に付多額の直接国税を納むる者の中より一人又は二人を互選して勅任せられたる者
七 朝鮮又は台湾に在住する者にして名望ある者より特に勅任せられたる者

第五条 国家に勲労あり又は学識ある満三十歳以上の男子にして勅任せられたる者は終身議員たるべし
2 前項議員の数は百二十五人を超過すべからず
3 第一項の議員身体又は精神の衰弱に因り職務に堪えざるに至りたるときは貴族院に於て其の旨を議決し上奏して勅裁を請うべし
4 前項の議決に関る規則は貴族院に於て之を議定し上奏して裁可を請うべし

第十三條 将来此の勅令の条項を改正し又は増補するときは貴族院の議決を経べし


 帝國憲法草案第三十四條は、枢密院における第一審会議第三読会と第二審会議第二読会によって「貴族院は貴族院令の定むる所に依り皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織す」と修正された。この修正案が明治天皇の御裁可を得て大日本帝國憲法第三十四條となった。

 枢密院帝國憲法制定会議の審議では、貴族院という名称の妥当性と貴族院の構成制規(貴族院議員の資格選任特権等)が法律ではなく勅令によって定められることの是非が論点となった。

 井上毅が帝國憲法草案第三十三條を読み上げるや、顧問官の鳥尾小彌太が「貴族院」と「衆議院」の名称が不当であることを詰り、それらを「立法上院」と「立法下院」と修正することを主張した。顧問官の東久世通禧はこれに同意し

「本官も、また鳥尾氏に賛成す。第三十四條に拠れば、貴族院は皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織すとあれば、其の勅任の中には士族平民もあらん。然らば即ち必ずしも貴族院とも云い難し。故に立法上院、立法下院と修正せんことを望む。」

と発言した。土方久元と吉井友実も鳥尾説を支持したため、山田顕義が議論を引き取り、

「國会の名称は各國多少の差異あれども、皆その國の慣習および歴史より来るものなり。現今本邦において國会の名称を定むるときに当り、奇怪なる文字を用ゆるときには、将来必ず國民の異議を生ずるの恐れあり。故に貴族院、衆議院の文字を用いられたる理由を原案者より陳述あらんことを乞う」

と枢密院議長の伊藤博文に質問した。伊藤は山田に対して以下のように答え、議会創設の精神と日本國独自の立場を説明し、帝國議会両院の名称の由来を紹介したのであった。

「議会の名称を改めて上院、下院となすの説あれども、其の説の由来する所を観察するに、皆憲法を設けて上下両院を組織するの旨趣には反対せざるものとす。

 元来國民の代表者を集めて立法の事、租税の事等を評議せしむれば、勢い國会を開き人民に参政の権を與えざるを得ず。ただ参政の権に付き各國多少の異同あるのみ。もしこの範囲を脱して國会を開くときには、立憲の要点を失するものなり。又國会を以て政治機関の一官庁と認むるが如きは、立憲政体を設けて人民に参政の権を與え、國会を開きて政事を論義せしむるの精神に反対するものなり。

 もし仮りに本邦において憲法を制定し立憲政体を設けて、人民に参政の権を與えんと欲せば、先ず日本國のため、君民上下の調和を謀り、憲法をして日本の國体に適せしめ、其の歴史に背戻せしめざることに注意すべきものとす。

 然れども憲法の模範は海外立憲國の成蹟に做わざるを得ず。又憲法に付き学術上の論議は、其の淵源たる欧州各國に取るも、其のこれを活用実施するは其の國の國体と利益とに依て多少折衷変換せざるを得ず

 この憲法を以て上下二院を組織するも、君主権は分割すること能わず。ただ君主権を実地に働かしむる上において、帝國議会をして之を論議せしむるのみ。君主権は分割すべからざるものとせば、貴族の必要なることを認む。貴族の必要を認めて其の効用を顕さしめんと欲せば、貴族一人一己にて之を為さしむること能はず。必ず一つの集合体として貴族院を組織するを要す。

 また本邦においては貴族及び人民の参政権は天皇陛下の附與せらるるものなり。この憲法に依て始めて確定するものなり。決して貴族、人民固有の権に非ざるなり

 貴族院に勅任の議員あれば純然たる貴族とも云い難しとの説あれども、この勅任議員といえども、君主の特裁に出でて、人民の公選に係るに非ず。かつ旧来の貴族その大部分を占め、また勅任議員はその任期中貴族の待遇を受くるものとす。然らば即ち名実相違するの憂いなし。また貴族院、衆議院の名称穏当ならざれば、これを改むるも可なり。ただ、上院、下院の文字は欧米立憲國の慣例に拠れば、法律上の文字に非ざるなり。

 以上陳述する理由に依り、原案においては貴族院、衆議院と称したり。」


 帝國憲法第三十四條が規定する貴族院は、皇族華族と國の勲労・学識・富豪の士を集めて國民慎重練熟耐久の気風を代表せしめ、両者を抱合親和して倶に上流の一団を形成し、政権の平衡を保ち、政党の偏張を制し、横議の傾勢をささえ、憲法の鞏固を扶け、國福民慶を永久に維持する上下調和の機関であり(大日本帝國憲法義解第三十四條解説)、決して貴冑(貴族の血筋)のみを立法の議に参預させる議院ではないのである

 ゆえに21世紀の日本国においても貴族院の再生は十二分に可能であり、貴族院という名称が現在の国情に合わなければ、伊藤博文の言う通り、我が国は、公選議院(衆議院)の弊害を抑制するに足る貴族院の構成と権能を維持しつつ、その名称を「立法上院」か「参議院」に改めればよいのである

 現在の我が国に必要なる改革は、参議院を、公選議院の弊害から皇室国民国家を救済する構成と権能を持つ上院に再生することである。
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posted by 森羅万象の歴史家 at 00:00| 大日本帝国憲法の真髄 | 更新情報をチェックする