2015年01月05日

アダム・スミス以上の超一流の社会思想家-福沢諭吉の日本皇室論と大日本帝國憲法

 イギリスケンブリッジ大学が世界に誇る碩学で、歴史と社会科学に精通した歴史人類学者アラン・マクファーレン教授は、福沢諭吉をフランスのモンテスキュー(法の社会の精神の著者)やスコットランドのアダム・スミス(国富論の著者)以上の超一流の社会思想家である、と高く評価している。

 福沢は日本の伝統精神を受け継いだ上で、近代化の推進に必要な思想を欧米から摂取したが、欧米に対する批判精神を失わなかったからこそ、日本独自の近代化を指導することができたと指摘する。

 マクファーレンは驚くほど日本の歴史に詳しい学者といっても過言ではない。膨大な資料を駆使して、江戸時代の日本庶民の日常生活までも詳細に描く出すことのできる博識である。歴史人類学者だから、論究の対象はもちろん日本に限らないが、彼の独創的な日英比較論は出色である。

 福沢諭吉は近代欧米における科学技術や政治制度や市場経済を高く評価する一方で、拝金主義や人種差別や帝国主義に批判的だった。そして、その批判の視点は、日本の伝統的な武士道の倫理に基いていた。この点もまた、マクファーレンは正確に把握し、福沢諭吉を褒めちぎっている。

 多くの日本人とりわけ日本人の学者が戦後の浅薄な思想に幻惑されて、福沢諭吉の実像を掴み損ね、正確な評価を歪めていることは、無念さを通り越して滑稽というほかない。なぜそれほどまでに歴史の真実を歪め、自国の偉人を否定したがるのだろうか(福沢諭吉の日本皇室論-現代語訳67ページ解説と梗概Ⅰ「帝室論」について)。 

 筆者が思うに、その理由は明白である。GHQによる公職追放の後、学会の要職を占めた学者とその弟子たちの中には、戦後生まれの日本人に支那と朝鮮に対する贖罪感を扶植して、河野洋平のような反日売国政治家を養成し、日本国を支那と朝鮮に従属させようとする者、戦後生まれの日本人から尊皇護国の精神を奪い去り、皇室の廃絶を画策する者がすこぶる多いからである。

 しかし彼ら反日的日本人が束になっても一万円札の肖像になっている明治の偉人には敵わない。支那と朝鮮の本質を看破する福沢の脱亜論と、皇室の偉大な存在意義を平易に解説する福沢の帝室論と尊王論は、支那と朝鮮に魂を奪われた学者や心が汚いアカに塗れている学者の目論見を木っ端微塵に打ち砕くのである。

 日本の帝室(皇室)は栄誉の源泉として国民の功名心を刺激して学問技芸を振興する偉大な威力を持つが故に、日本国民は帝室が栄誉の源泉たることを損ねてはいけない、すなわち帝室を決して汚してはいけない。したがって帝室は神聖不可侵(無答責の地位)でなければならず、独立(自治)してないければならないのである。

<帝室論一部抜粋>

 我帝室は萬世無缼の全璧にして人心収攬の一大中心なり我日本の人民は此玉璧の明光に照らされて此中に輻輳し内に社会の秩序を維持して外に國権を皇張す可きものなり其寶玉に觸る可からず、其中心を動揺す可らず、官権民権の如きは唯是れ小児の戯のみ豈小児をして之に觸れしめんや、之を動揺せしめんや、謹で汝の分を守て汝の政治社会に経営す可きものなり。

「わが帝室は万世無欠の至宝であり、人心収攬の一大中心である。わが日本の人民はこの宝玉の明光に照らされて、この中心にひしめき集い、内には社会の秩序を維持するとともに、外には国権を四方へ拡張すべきものである。その至宝に触ってはならない。その中心を動揺させてはならない。官権、民権などというものは小児の戯れにすぎない。小児をして宝玉に触らせてよいものだろうか。小児をして一大中心を動揺させてよいものだろうか。謹んで汝の分を守り、汝の政治社会の活動に専念すべきである。」(福沢諭吉の日本皇室論-現代語訳41、168ページ)


 交詢社を設立した福沢諭吉の日本皇室論(帝室論と尊王論)は、近代日本の皇室典範や憲法、議会などが制度的に定まる以前に書かれたもので、皇室の在り方に関する提言の書であり、また啓蒙の書である。とくに明治15年(1882)に福沢が発表した帝室論は、当時の為政者と国民に多大な影響を及ぼし、それまで福沢に対して「拝金宗の人(拝金主義者)」という偏見を抱いていた乃木希典大将ですらこれを読んで認識を改め、福沢に敬服したのである。

 福沢諭吉の日本皇室論の要旨すなわち「帝室は栄誉の源泉にして神聖不可侵であり、直接に万機に当らずして万機を統べ給う人心収攬の一大中心(国家統治の権威)なり」は、大日本帝國憲法を貫く思想と一致する。福沢の日本皇室論は、戦後生まれの我々日本国民が大日本帝國憲法の真髄を把握することを助け、それを通じて日本国憲法(マッカーサー占領軍憲法)からその本質を抉り出すための優れた啓蒙書となっている。

 愚劣な憲法改正論が喧しくなっている今こそ真価を発揮する、憲法学徒の必読文献が福沢諭吉の日本皇室論―現代語訳(原文総ルビ付き)(原文総ルビ付き)である。
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posted by 森羅万象の歴史家 at 22:00| 憲法学の名著と迷著 | 更新情報をチェックする