2014年03月20日

現代に比類なき巨大な知の政治家−伊藤博文演説集

 金子堅太郎の回想録によれば、明治天皇の詔命を奉じ、金子、井上毅、伊東巳代治を統率して帝国憲法原案を起草した伊藤博文の愛読書は、アメリカ合衆国憲法のコメンタリー(解釈書)「ザ・フェデラリスト」(一七八七年刊行)であり、伊藤は明治三年以来、このアメリカの古典的名著に依拠して憲法を研究し、彼ら四人が帝国憲法原案を起草していた時はもとより、明治二十一年から始まった枢密院帝国憲法制定会議の際にも、伊藤はフェデラリストを常に自分の座右に置いて何か問題が生じる度にこれを繰り返し読み、帝国憲法の制定に尽力したという。

 伊藤博文演説集(講談社学術文庫)は、伊藤がフェデラリストやエドマンドバーク、イギリス憲政史を深く学び、帝国憲法原案を起草したことを立証すると同時に、編者の指摘する通り、伊藤が言葉を通じた相互理解と説得をもって国家構想や政治理念の追求と実現に専心した、現代日本には見当たらぬ巨大な知の政治家であったことを立証している。

 また伊藤の演説の所々に福沢諭吉の日本皇室論(帝室論1882年と尊王論1888年)に酷似した言葉がある。個人的にはこれが興味深い。編者には伊藤演説集の続刊を期待したい。

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posted by 森羅万象の歴史家 at 12:00| 憲法学の名著と迷著 | 更新情報をチェックする